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アメリカが指名する「将来の日本国総理大臣」による異色本

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この「『活米』という流儀」という本は、 米国で安全保障論を専門に学んだ副大臣経験者が書いたという点で、異色な本である。日本の安全保障についていかなる考えを持っている人でも、この本の主張に同意するかは別にしても一読の価値はある。

著者である長島昭久は、自ら「リアリズム」という米国の安全保障の理論枠組みが、自分の立脚点である、とこの本で述べている。リアリズムというのは、世界というのは世界を統一して管理する世界政府というのは存在しないのだから、国家と国家が国益をめぐってしのぎを削っている、それが国際政治だ、という極めて冷酷な、ある意味では悲観的な立場で国際政治を考える系譜である。

それに対して、リベラリズムという考え方がある。これはどんな国同士でも経済的に交流を深めていけば、戦争をすることもなくうまくやっていけるという楽観的な立場に立つ。米国のみならず、世界の安全保障専門家たちはこの大きくはこの2つの立場に別れて議論しているわけだ。

著者である長島は、リアリズムとリベラリズムの両方の考え方を米国の最高レベルの教授陣から教わっているのだろう。それはこの本の中で長島が、オバマ大統領のアドバイザーでもあるブレジンスキーやキッシンジャーとの交流の様子を写真で紹介していることからも伺える。

この本の中で、長島は米国に留学した学生ならば最初に学ぶであろう安全保障理論の基本の部分を、日本の中国に対する今後の対処の仕方という事例なども交えて紹介している。その意味でアメリカのリアリズム理論について知りたい人に向けての入門書としては推薦できるものだろう。

ただ、リアリズム一辺倒では政治は動いているわけではない、ということも知っておく必要がある。実際の国際政治ではリベラルとリアリストの戦略家たちがそれぞれの視点で大統領に国家戦略アドバイスを行って、その上で国家政策は決まっていく。つまり、要は使い分け、バランス配分なのだ。

長島はここで自分を「リアリスト」というふうに自己規定し、強調している。それはヘンリー・キッシンジャーのような大統領補佐官であれば立派な立場であるのだが、様々な意見を持っている国民の代表者である現職の衆議院議員として、リアリズム一辺倒で押していくのがふさわしいかどうかは疑問が残る。

また、彼はしきりに「日本の国益のためにアメリカを活用する」という主張をしているが、実際のところ、これまではアメリカが日本をうまく活用してきた、というのが実態であろう。アメリカはこれまで世界覇権国である国家戦略の本場であるから、世界中から若い30代前半の長島のような意欲のある若者を呼び寄せて、やがてアメリカとのパイプになる人材を育てている。

彼自身が現地でシンクタンク時代の同僚であったマイケル・グリーン元米NSCアジア上級部長などは、長島だけではなく、自民党にも議員になる前にCSISに留学していた小泉進次郎のような若手人材を育成して、米安全保障サークルの利益代弁者候補として育てている。これはアメリカの国家戦略の上で極めて合理的な行動である。長島自身はそれに気づいているかはわからないが。

現在、アメリカは大規模な予算削減のさなかにあって、従来のように米軍を世界中に展開させて世界の単一覇権国として睨みを効かせることができなくなっている。そのような状況について米国でも論評されるようになっている。そこでアメリカが採用しているのがアメリカがこれまで果たしてきた太平洋の地域安全保障のコストを日本やフィリピン、オーストラリアに負担させようとする「オフショアバランシング」という戦略である。

中国だけではなく他の国との安全保障についても日本には独自のアジア外交の視点があってもよいはずだが、オフショアバランシングによる責任をこちらが引き受ける場合、アメリカの安全保障政策の単なるブランチ(支部)に成り下がってしまうおそれがある。この辺について、長島は何よりも台湾重視、中国牽制という考えにたっているようだから、アメリカの安全保障サークルにとっては「説得コスト」のきわめて安い人材であるとも言える。

繰り返すが、長島は自分のことを「リアリスト」だと自己規定しているのだが、しばらく彼の言動を研究してきた評者の側から言わせてもらうと、やっぱりどこかで彼はネオコンとは言わないまでも情熱に動かされている部分があると言わざるを得ない。例えば、それはかつて2010年に起きた尖閣漁船事件のあと、長島が民主党議員有志と発表した「菅政権への建白書」という文章によく現れている。

本書の内容とはずれるが、彼はこの建白書の中で、尖閣漁船事件をめぐる経緯を「まるでかつての三国干渉のような」という時代がかった表現で論評し、最後は「臥薪嘗胆」という「復讐戦」を誓ったかのような言葉で締めくくっている。ここで彼はリアリストではなく、情熱で大衆を煽る側に立っていた。政治家がこういうナショナリズムを煽る側に立ってはいけない。

そもそも、あの尖閣漁船事件が政治問題化したのは、自民党時代に中国と締結した「日中漁業協定違反」を、民主党菅政権が率先して行ったことが原因であることが明らかになっている。自分たちが自民党時代に約束していた約束を破って漁船の船長を日本国内法で逮捕してしまえば、中国が怒るのは当然である。台頭する中国に対しては関与と牽制が必要だという点では同意するが、不必要に国境「紛争」を引き起こすべきではなかった。三国干渉だの臥薪嘗胆だの言う前に、尖閣問題を最初に政治問題化したのは民主党菅政権、野田政権であることをまず認識してほしい。

また、ネオコンに対して、長島は2003年から始まったイラク戦争の過ちについて、イラク戦争を批判したようなリアリスト学者たちほどには、堂々とアメリカに面と向かって、そのブッシュ安全保障政策の誤りを指摘していたとは私は調べた限りでは、記憶に無い。

さらに、アメリカに対して「いざというときは諫言する」と長島は本書で宣言しているが、それが果たしてどの程度のものなのかということも疑問である。結局とのところ、自分のカウンターパートであったマイケル・グリーンやリチャード・アーミテージのようなブッシュ政権の重鎮だったネオコンの汚らしいアメリカの安全保障マフィアたち(彼らとのツーショット写真も長島は本書で紹介している)に利用されているだけではないのか、と思えてしまう。

また、長島は「自立外交」ということを重視していると主張している。それならば、なぜ日米地位協定のような不平等条約について物を言わないのかということを、だれでも疑問に思うはずである。これについて長島は、「日本がアメリカにとっての有事のリスクを取る、すなわち集団的自衛権を行使しなければ、そのようなことはアメリカに引け目を感じるのでとても持ち出せない」という趣旨のことを本書の終わりの方で述べている。この地位協定に対する考え方において、長島は明らかにアメリカのジャパンハンドラーズと言われる人の視点に立っている。このへんが長島が「アメリカの手先」と揶揄されてしまう原因なのだろう。

実は、この点は評者が本書の中で一番、彼との意見の相違を感じたところである。仮にも「活米」というのであれば、そのようなアメリカに対する引け目を払拭する、道義的対等性を求めるのではなく、しっかりと利用して地位協定も改正させた上で、番犬としてのアメリカを利用するというやり方もあるはずだ。それだけのことを要求しても、アメリカにとって嘉手納飛行場や横須賀基地の重要度は世界戦略上大きい。普天間基地の重要性はこれに比べれば極めて薄い。時には、アメリカに対して時に嫌がらせのような行為を行ってけん制することもまた必要である。

これをボーキング戦略というが、そのことはリアリストの一人であるスティーブン・ウォルト自身が極めて重要な戦略と認めている。こういうことを見てくると、やっぱり、長島自身が立派に「活米」しているというよりは、アメリカにうまくいいように利用(「活日」)されているのではないかという疑問が消えない。

そのように私が厳しいことを言うのは、理由がある。かつてヘンリー・キッシンジャーが中曽根康弘を日本の総理大臣に「指名」していたように、長島もまた、マイケル・グリーンやアーミテージようなアメリカ側から「いずれは総理大臣になって俺たちの次の世代のジャパンハンドたちとうまくやってくれよ」と期待をかけられた人材だからである。

総理大臣になるとアメリカが決めてしまった人材だから、国家を背負うわけであるから、私達の運命を預けることになる。そうであるならば、アメリカだけではなく、もちろん中国やロシアともうまくやってもらわないと、困る。

だから長島は中国ともしっかりと交渉できる人脈を作らなければならない。しかし、それをできていないことを長島自身が認めている。今はもうバラバラになってしまったが、民主党には小沢一郎系のような中国とも話ができる勢力、長島のような知米派、両方揃っていた。その2つの勢力がチームプレイをしないまま、外務省の親米一辺倒の官僚機構にうまい具合に分断されていった。

それを長島も傍観していた。積極的に鳩山政権つぶしに加担したのではないにしても、この罪はやはり大きい。もともと長島は自民党の石原伸晃の秘書だった。リベラル系政党と保守系政党という風に分かれていくとすれば、長島にとっても逆に幸せなのではないか。

色々と述べてきたが、リベラルとリアリズム、両方の議論について理解しておくことは極めて重要である。なぜならば、世界の安全保障はその「作法」によって動かされているゲームのようなものだからだ。その意味で、長島の議論を、リベラル系の国際政治学者や政治家たちの議論と読み比べてみて、リベラルとリアリズムの違いについて理解し、それぞれの長所と短所について理解できるようになることは良いのではないだろうか。

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